やまめの学校 堂城校長のインプレ

やまめの学校 堂城校長のインプレ(S5/現行モデル)

テスト機材  FARSPORTS S5

テスト時のタイヤ  コンチネンタルGP5000TR

テスト時に使用したフレーム   HGSBT スチール

コンポーネント カンパニョーロ (スプロケットはシマノアルテグラ 11-28T)

インプレ

選手時代に乗ってきた29er。

「ホイールの慣性」を活かした走りができなければ、加速性能がもっさりとした、ただの重たいMTBになってしまう。

「ホイールの慣性」を活かし「慣性を殺さない走り、ブレーキング」が、スクールで教えている私の走り方の元になっているということを前提にインプレを読んでいただければと思います。

S5を履かせ実際に走ったところ、これまでに履いてきた他メーカーのホイールと比較して「ホイール自体の慣性」が非常に大きいことにすぐに気が付きました。

以前、リヤ38mm フロント50mmの、フロントのハイトを高くしたホイールを作成し、「慣性が活かせるホイール」を作り、実際に履いてテストしていたことがあります。

「フロントホイールの慣性を活かすことが速さや楽さに繋がる」と言うのが、29erを速く走らせるコツであると言う事に気が付いた事が、そういったホイールを作った経緯です。

FARSPORTSのS5は、恐らくフロントのリムを広くすることで「慣性を活かす構造」となっているのだと思います。

私が作ったホイールは、リヤのハイトを低くして漕ぎ出しを軽く、フロントで慣性をといった考えでしたが、FARSPORTS S5は、リヤホイールのハイトを若干高く、フロントホイールの幅をリヤよりも太くすることで同様の効果を狙ったものであるのではないかと思います。

コーナリング前のブレーキング時、リヤホイールのハイトが低い私の作ったホイールは、リヤの慣性がS5と比較すると「死んでしまう」感じがします。
FARSPORTS S5は、前後のちぐはぐな感じが全くなく、漕ぎだしの軽さと慣性の付きやすさの両方を兼ね備えている、本当に素晴らしいホイールであると断言できます。

以前購入させていただいた、前後55mmハイトのリムブレーキ仕様のカーボンホイールを大変気に入っており、今も継続して使用していますが、高速になればなるほど、または低速からの加速時にフロントホイールの浮き上がりや頼りなさを、S5をテストした後だと強く感じてしまうようになりました。

S5にフロントの頼りなさを全く感じないのは、スルーアクスル化された事よりも、むしろフロントリムの幅が広い事による安定感なのではないかと思います。

併せてカーボンスポークの金属とは全く違うカッチリとした感じが、高速時・コーナリング時の安心感に繋がっているのだと思います。

その安心感が、コーナリング時に思い通りのラインを通す事に繋がっています。

ハブの回りが良い車輪はいくらでも作る事は可能でしょうが、「慣性を活かす」構造を前後でリムの幅を変える方法で作り出す事は、私は想像する事ができませんでした。

大変お恥ずかしい話ですが、私はFARSPORTSのS5がリムの幅が前後で違うと言う事に全く気が付いておらず、その状態でテストしていました。

なぜこのホイールはこれ程までに走るのかを考えている際に、ノギスを当てて計測した際に初めて気が付きました。

その際には、「間違えて車輪を渡された」のだと・・・・・・・・・

FARSPORTSのサイトを確認して、それが私の間違いであることに気が付き、そういった構造になっているために、あのような走りが生み出されているのだと認識できました。

FARSPORTSのS5は、他メーカーには無い特徴を持った素晴らしいホイールであると思います。

このホイールの持つ特徴を活かした走りはどんな走り方なのか、ブレーキングやコーナリングはどんな感じなのかを、私はこれからも追及して行こうと思っています。

それを考えないのであれば「軽い・重い・回る」でしかホイールを判断できず、何を履いても一緒になってしまうでしょう。

慣性を活かした走りを目指してきた私にとって、FARSPORTS S5は間違いなく理想的なホイールで、私が求める全てにおいて満足できるホイールです。

「フロントリムを太く」は、これから他メーカも模倣するのではないでしょうか。

素晴らしいホイールに出会わせていただいた事、テストする機会を私に与えて下さいましたこと、本当に感謝しております。